DESIGN PUBLIC

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INTRO

magazine for select your life

「DESIGN PUBLIC」では、
社会の中で価値が見出されていなかった物事を、
新たな価値としてデザインし、
発信している事例を紹介
していきます。
DESIGN PUBLICを通して、
その事例の根底にある想いが伝わり、
世の中に広がっていくことを願っています。

INFORMATION

 
 
 

vol.02 図工ラボ

「図工」=小学生でも解るものづくり、「ラボ」=実験・研究する場。

南海本線七道駅を下車し西へ10分程歩くと、昭和の時代よりおそらく変わっていないであろう住宅街の、さらに奥まった場所に今回取材する先がある。取材先の名前は「図工ラボ」。名前からして何やら楽しげだ。そこは福井守さんと菅野大門さんの2人がdesign office A4というプロダクトデザインユニットとして運営する自身の為のものづくり工房であり、インテリア雑貨の企画・制作、販売を行い、ワークショップ(図工教室)なども企画・運営しているお店である。
「ものづくりで、人とモノ、人と人をつなぐ」をコンセプトに、本業のプロダクトデザインをする傍ら、名前の通り様々なものを日々図工し、実験している。それこそ小学生のときにつくったことがあるだろう消しゴム判子から、大きいものでは自らのショップまで。彼らは純粋にものづくりを楽しんでいる。そしてその経験をお互いにとってメリットのある形で、できるだけ多くの人と共有しようとしている。それも友人・知人、近所の小学生や地域のコミュニティなど様々な人を巻き込みながら。
今回は図工ラボの中でもインテリア雑貨店を運営し、ワークッショプを行う活動に焦点を当てる。

個人の時代だから、巻き込める。

当初は神戸芸術工科大学での在籍時に数名でプロダクトデザインユニットとしてスタートし、様々なコンペに精力的に応募。コンペへの初応募にしてグランプリを受賞したのが「faces stamp」だった。指で圧力を加えることにより様々な表情を紙の上に表すことができるシリコン製のハンコだ。「適当に彫った顔だったんだけど」と気負いなく製作したように菅野さんは語る。そのプロダクトからは現在の二人から醸し出される、どことなく力の抜けた楽しげな雰囲気と通ずるものがあり、きっと楽しみながら制作したんだなということが感じられる。
大学卒業後に4人でdesign office A4を立ち上げ、のちに現在のメンバーである福井守さんと菅野大門さん2人となり、暫くは神戸市内のマンションで制作を続けていた。堺へ移転し現在の図工ラボを開くきっかけになった一つは、今の図工ラボの雰囲気からはあまり想像できないのだが、二人の関係に息が詰まるようなことが何度かあった為だった。現在は、制作のかたわら接客することで人とのつながりを生み出し、また気分転換にもなり、関係が悪化せずに済むと二人は笑う。
もちろんそれだけではなく、「一般の人より持っている、ものづくりの知識や技術を色んな人に伝えたい」「ものづくりはそんなに難しいことではなく、楽しみながらできる」「ものづくりのハードルを下げたい」などの思いが芽生えてきたことに加えて、「インターネットの発達により今後はますます個人制作の時代に入るのでは」という考えから、自分たちの知識を皆と共有することで様々な人をものづくりや自分たちの活動に巻き込めるのではと思うようになっていた。
そのような思いや自分たちで改装可能な古民家との出会いなど、様々なタイミングが重なり合い、堺にて図工ラボが立ち上がることになった。

自分たちが楽しむことで、
その空気に引き寄せられた人たちを楽しませることができる。

お店作りも本業のプロダクトデザインをしながら、合間合間に自分たちの手で行い、楽しみながら進めていく。できあがったお店は、さすがプロダクトデザイナーというだけあってクオリティーも高く、なおかつ楽しんで作った雰囲気がにじみ出ている。
作業場兼ショップである図工ラボ開店後、ワークショップはすぐに開催したという。初めての参加者は近所の小学生1名。マグネットや画鋲を作る内容だった。その後もそこまで大きな告知という告知も特にしないままだったが、来店者への告知や雑誌で掲載されることで回を重ねるごとに徐々に参加者が増え、今では遥々東京や熊本から参加する人もいるとのこと。それだけではなく、東急ハンズや高島屋、東京ミッドタウンなどからも声がかかり、セレクトショップとしての販売とワークショップをあわせて行う図工ラボ分室として、ときおり催事などに参加するまでになっている。
人々が図工ラボの活動に惹きつけられる理由はどこにあるのだろうか。ワークショップでは基本的に‘簡単に出来上がり、持ち帰って使えるもの’を制作する。それだけなら他にもあるだろう。ただ大きな違いについて彼らは「その道にこだわる職人が教える教室と、デザイナーが教える教室、という点にまず違いがある」という。確かにワークショップでの制作物を拝見すると、毎回題材がかわっているし、職人が作るその道一本といった感じはなく遊び心が加えられたものが多い。その場でつくることで体験や知識をえるだけではなく、持ち帰ってもきちんと部屋で飾りたくなるような、その後も使いたくなるようなものを図工題材にしている。そんな点まで彼らはデザインしているのではないだろうか。
そしてもう一つ大きなポイントとして筆者が感じるに、それはとにかく親しみやすく楽しそうなのだ。彼らのホームページを見てもらうとわかると思うのだが、とにかくみんな楽しそうに制作しているのが見て取れる。そして、もしかするとその中でも彼ら自身が一番楽しんでいるのではないかという気さえする。「ものづくりってそんなに難しいことじゃなくて、楽しいことなんだ。」そんな想いが伝わってくる。そんな楽しんでいる、楽しそうな空気が、プロダクトや場の空気、その他いたるところで垣間見られ、魅力となって人を惹きつけているのであろう。

ゆるくつながり助け合う運動体。

ショップとしての側面にも触れておきたい。雑貨販売スペースでは知人が制作したものが半数を占めているが、これは販売時に制作者の人となりやどのような思いで制作しているかを伝えられるからだ。ショップで置かれているものをみればわかるのだが、知人がつくったものだから無条件で置いている訳ではない。もしそうでなければ、たちまちよくわからないぼやけたお店になってしまう。そこはシビアに、きちんとクオリィティは維持し、デザインのよいものを丁寧にセレクトしている。その上で背景を大切にするその姿勢は、ものづくりを生業にする者にとって信頼できる心強いショップであろう。図工ラボは、彼ら以外のものづくりをする人たちにとっても重要な場になっている。
プロダクトデザイナーがショップを持つ利点として「売り場があることでエンドユーザーが近くになり、自分たちdesign office A4の制作物への説得力が増すんです」と二人は語る。また、「売上的にはそこまで多くはないが雑貨販売のショップをやることで気持ちとしての余裕ができ、A4としてすべきではないと判断した仕事はきちんと断れる」と語る。それは傲慢ではなく、クライアントとの相性や求められるスタンスなど、どうしても噛み合ない場合もあるからだ。会社や団体などの立ち上げによくある話だが、やはり生計の面で自分たちがすべきでない仕事も受けざるを得ず、その結果、自分たちが本来したいことやすべきことが中々できないという状態に陥りやすい。このような状況に陥らないためにも、本業を際立たせるための別アプローチとしてショップを持つことはとても有効なのではないだろうか。今後の働き方という視点で見たときに様々な分野でこのような在り方は応用できると思う。

共有地を耕すこと。

社会的意義というと何だか堅苦しく、彼ら自身もそこまで考えてはいないかもしれないが、ワークショップを通して簡単にものづくりに参加できるという経験が、多くの人たちにデザインの必要性への意識を生み出し、また日常の様々なもの・デザインに対する見方の変化を生むことになる。そういった経験をした人たちが増えることで、ものづくりを取り巻く環境はより豊かになっていくのではないだろうか。
最後に、情報や流通の発達によって個人でのものづくりがより可能な時代となり、それをサポートするような形をとるということは、デザイナーとデザイナーでない人の境目が曖昧になり、下手をするとデザイナーと名乗る人が増えるきっかけをつくるのではないか。そんな状況になると自分たちの立場が危うくなるのではという少し意地悪な質問をしてみた。すると彼らは「センスを磨き、精進に励むのは勿論のことだけど、ワークショップでものづくりを体験すると楽しさだけではなく、ものづくりの難しさも理解してもらうことができ“センス良く作り上げることは実はそう簡単ではないんだ”と実感してもらうことで、“デザイナー”と“デザイナーではない人”との差が改めて浮き彫りになるんです」と語った。
彼らは自分たちの置かれている状況を理解し、しかし萎縮することなく周囲を巻き込みながら成長を図っている。つまり自分たちだけではなくものづくりという大きなフィールドを耕しているのである。

PROFILE

図工ラボ | http://www.zuko-labo.com/
design office A4が運営する、ものづくり工房。
戦前に建てられた古い民家を改装して、インテリア雑貨の企画・制作、販売するとともに図工教室など開催。

design office A4 | http://www.designofficea4.com/
主に、家具・家電・生活雑貨・インテリア用品等のプロダクトデザインをメインに、
その他、店舗のロゴから広告ツール(名刺・はがき・広告等)のグラフィックデザインも手がけるデザイン事務所。

WRITER PROFILE

前田 奈穂
大学時代は都市社会学を専攻。卒業後は染織を学ぶ。
現在は会社員であり、一児の母。

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