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「DESIGN PUBLIC」では、
社会の中で価値が見出されていなかった物事を、
新たな価値としてデザインし、
発信している事例を紹介
していきます。
DESIGN PUBLICを通して、
その事例の根底にある想いが伝わり、
世の中に広がっていくことを願っています。

INFORMATION

 
 
 

vol.05 SUNZO DESIGN PROJECT

障害者と社会を接続するデザイン

障害者・児と、その家族を支援するNPO法人サンフェイス、WEB制作会社のZEALPLUS、そしてデザイン会社otto design lab.の三者が集まり、2011年「SUNZO」という名のプロジェクトが始動した。
作業所で障害者が作る商品にデザインを投入し、その商品の魅力を市場に伝え、売り込むための「仕組み」まで考えるプロジェクトだ。三者それぞれが自分たちの得意分野を活かしながら進めていった。そのやり方は、単にパッケージや商品の見栄えを整えることに留まらず、販売方法、福祉作業所との連携のあり方や作業所での生産方法にまで関わった。
東京インターナショナルギフトショーへの出店をきっかけに、市場で多くのバイヤーから注目を集めながらも、実際に生産・販売、それを売り上げにつなげていくことの難しさに直面する。それでも、目指すのは売り上げを伸ばすことだけではない。あくまでも中心にいるべきなのは、作り手である障害者たちであることを意識し続けた。三者それぞれのやっていることや背景が異なることから、何を重視するべきか、ときには激しく意見をぶつけ合いながらも、SUNZOはやり方を模索し、福祉の世界を盛り上げようとしている。障害者の生きる世界と社会とをどのように接続していくのか、そうした問いに自ら答えていきながら、プロジェクトは現在進行形で進められている。

障害者の作ったものに心動かされ、SUNZOは誕生した

一つのNPOと二つの企業からSUNZOは成り立っている。障害児のデイサービスなどを運営するNPO法人サンフェイス(以下、サンフェイス)、WEB制作会社のZEALPLUS、そしてデザイン会社のotto design lab.(以下、otto)。それぞれの頭文字をとってSUNZOという名をつけた。
サンフェイス代表の久田亮平さん(以下、久田さん)は長い間障害児たちと向き合ってくる中で、作業所で障害者がつくる商品が公共施設やバザーで目にすることはあっても、一般の市場にほとんど出回っていないことに疑問を感じていた。その原因で考えられたのは、デザイン性の欠如だった。
実は行政などの支援もあって、全国的にデザイナーが作業所に関わる事例は増えている。こうした動きは障害者福祉の世界に新しい風を吹き込むものとして期待されているが、現実はそう甘くなく、全てが成功しているとは言い難い。
ではどのようにデザインを取り入れるといいのか。実際に自分たちでやってみることを決意するきっかけとなったのが、「自立ホームひまわり」というケアホームの存在だった。
身体障害者が居住する3階建てケアホームの運営をサンフェイスが引き受けることになり、どうせ運営するのなら、住む家にこだわる自分たちの感覚をケアホームにも活かしたいと考えた。障害者が住むからといって機能性だけを求めるのではなく、もっとおしゃれであってもいい。
そう思った久田さんはデザイン会社ottoの社長で従兄弟の久田祐輝さんに連絡を取り、建物の内装デザインを依頼。当時まだ新人デザイナーだった角谷充彦さんが試行錯誤の末完成させたデザインは、型抜きした木材を壁に張り巡らすというもの。その加工作業を作業所に依頼することにした。ほんとうに図面通りできるのか、内心不安だったが、仕上がってきたサンプルを確認した角谷さんはクオリティの高さに驚いた。同じ規格のものは何一つないにも関わらず、一つひとつがしっかり図面通りに出来上がっている。このとき、作業所と一緒に何かを作り上げたいという想いは確信に変わった。
昔からの知り合いであるWEB制作会社ZEALPLUSの野口顕さんも加わり、それぞれが自身の得意分野を活かすようなかたちで、SUNZOプロジェクトが始動した。

デザインの可能性とは

作業所へのデザインの関わり方は大きく二つ考えられた。一つは作業所が作る物やパッケージをデザインするというもの。もう一つは、作業所で作った物を売るための「仕組み」をつくるというものだ。
SUNZOは、どちらも必要だと考えた。そしてたとえば、木を電ノコでくり抜くことに長けた障害者がいたり、段ボールや紙箱をデザインし製造している作業所があったりすると、その作業所や働く障害者を訪ね、それぞれの強みを生かした商品作りを考えていった。
その上で、これらの商品をどう市場に売り出していくのか考えた。作ったものを売らないことにはこのプロジェクトの意味がなくなる。しかし、売れるためにはまず生産の行程がまわり続けなければならない。そのためには、商品の質と福祉施設職員のモチベーションが下がることなく保たれ続ける必要がある。
そこでSUNZOは、実際にできあがった商品を全て買い取ることにした。こうすれば、作業所が大きなリスクを抱えなくて済むからだ。また障害者福祉を専門とする職員たちに、商売のことまで考えてもらうのは負担が大きすぎると考えたこともある。作業所には納期までに確実に商品を作ってもらうことに専念してもらった。
こうしたやり方の基盤には、サンフェイスが長年障害者福祉に関わってきたことがある。作業所の抱える悩みや思いを共有し、弱い部分も知っていたからこそ、不必要に負荷をかけることを避けられた。また単に、作業所でつくったもののパッケージをデザインするというだけではうまくいかないことも分かっていた。むしろそれだけで、「何かが変わる」と思われてしまうことの方が怖いと思った。商品を売るための「仕組み」まで考えてこそ、デザインは力を発揮する。
しかしそうは言っても、SUNZOはデザインというものの可能性を今でも模索し続けている。デザインがあればすべて良しなのではなく、それをどう使っていくか。デザインとは、そこまで考えてはじめて活かされるものだと捉えている。

動き出したからこそ見えた現実の難しさ

いよいよ商品を売っていく段階となった2011年、まず活動の第一歩として世界中からバイヤーが集まる東京インターナショナルギフトショーに出店。そこで想像以上の反響があった。自分たちのやっていることにたくさんのバイヤーが注目し、作業所でつくった商品に注文が相次いだのだ。また「どんなかたちでもいいから関わりたい」と、多くのデザイナーから声をかけられた。
こうしたチャンスをどう生かすのか。ここで問題が浮上する。
注文に応じてたくさんの商品を作れば作る程、作業所で働く障害者の給料(工賃という)はアップする。だが、実際にはすべての作業所が商品を大量に生産する力を持っているわけではない。そのため、生産の追いつかない作業所が出てきてしまう。また障害者といわれる人たちは、手を動かすのが遅かったり効率的に仕事をこなすのが難しい場合が多い。障害者の「できない」部分に照準があてられるのでは、元も子もなくなってしまう。
電ノコのうまい人がいても、大量に生産するのは難しかったりする。また一つひとつを丁寧につくることが作業所の強みであるが、それはときに弱みともなる。
実際に動き出したSUNZOはこうした現実に直面し、もう一度仕組みを考え直さざるを得なくなった。どうすれば個々の障害者、施設の強みを生かしながら、作業所でつくった商品を市場で売っていくことができるのか。商品の生産過程に必ず障害者が関わることを条件に、もう一度新たな商品を開発し、それを売っていく方法を模索することにした。

「価値あるもの」の定義自体を作り直していく

もともとデザインというものが作業所商品に取り入れられるようになった背景には、作業所で作られる商品が手づくりの域を出ず、なかなか販売につながらなかったことがある。作業所で作られた商品の売り上げを伸ばすことで、少しでも障害者が手にする工賃を引き上げていこうという思いから、作業所が個々に取り組み出したことが始まりだった。
しかしながらSUNZOの目指すところは、必ずしも障害者の工賃の底上げではない。それも大事なことではあるが、「お金」というものが、そもそも障害者にとって価値のあるものとは限らないからだ。
作ったものが高価な値段で売れることよりも、周りから褒められ、認められることに喜びを感じる人もいる。久田さんは自身の経験から、工賃を上げることばかりに目を奪われれば失うものが出てくると危惧する。デザインが投入され、いくら商品の見栄えが良くなったとしても、そこに障害者が関わっていなければ意味がない。作るスピードは遅いかもしれないが、一人ひとりが作り手として楽しんで関わっているのならそれ以上のことはない。
久田さんは、ottoデザイナーの角谷さんを何度も作業所に連れて行った。カッコいいものを作るだけならどんなデザイナーだってできるかもしれない。しかし、何度も現場に足を運んだ角谷さんだからこそ、障害者の人となりを肌で感じ、そこに今までにない何かが生まれるかもしれないと考えたからだ。
デザインをする際角谷さんは、この人たちには一体何ができて何ができないのか、またできないことをできるようにする必要があるのか考えた。そしてデザイナーには何ができるのか、こうしたことを丁寧に考え、デザインに落とし込んでいった。この地道な取り組みがSUNZOのこれからにつながろうとしている。
今SUNZOは過渡期にある。障害者の生きる世界の価値や存在を肯定しつつも、社会との接続や整合性というものを考えながらプロジェクトを展開しようとしている。今後はもっと多くの人々を巻き込んだ新たな取り組みを始めるという。福祉、デザイン、それを伝えるWEBという媒体、それぞれの分野で追求してきた人たちが集まり、さらにもっと多くの人たちの力を借りながら、既存の社会と障害者の生きる世界との接続のあり方を変えようとしている。

PROFILE

SUNZO DESIGN PROJECT | http://sunzo.org/
福祉作業所で作られる商品の価値を高めて、世の中に発信する事を1つのビジネスモデルとして確立させ、
福祉作業所で働く障がいを持った方の生活水準を上げる事を目指し、
NPO法人サンフェイスとWEB制作会社ジールプラスとデザイン事務所オットーデザインラボの3社で
合同に立ち上げたプロジェクト。

WRITER PROFILE

井狩 恵
大阪生まれ。
政策学や政治学を学ぶかたわら、家族に知的障害者がいることから障害学に没頭し、
障害者とは社会が作り出した存在だという考えに行き着く。
障害者の作業所、障害当事者が運営する自立生活センターを経験した後、
現在は、考えていることをカタチにするべく執筆とフィールドワークをコツコツやっている。
将来の夢は石垣島に住むこと。

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