DESIGN PUBLIC

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magazine for select your life

「DESIGN PUBLIC」では、
社会の中で価値が見出されていなかった物事を、
新たな価値としてデザインし、
発信している事例を紹介
していきます。
DESIGN PUBLICを通して、
その事例の根底にある想いが伝わり、
世の中に広がっていくことを願っています。

INFORMATION

 
 
 

vol.04 コミュニティカフェ パンゲア

NPOがカフェから描くコミュニティという地平線

地域のことを考えるのに必要な要素とは何か?誰が考える。どこで考える。何を考える。どうやって考える。かつてあった超大陸からその名をとられた1軒のカフェがその問いの答えを模索している。さりげなくNPO・NGOをアピールできるような、小学校区から自転車で来られるような。サービスの提供者と購入者という関係をとっぱらうような。地域の役にたてるような。そして、どこか気になるような。そんなコミュニティのデザインを目指したカフェ。多くの人々にとっての通過点であり、交差点でもある。そして時には立ち止まり、心や体を休め、またそこへ戻って来ることもできる。集う人に国境はない。そんなボーダレスな場所である。組織としての自立性を出発点に様々な“あり方”をデザインしながらその先までを見つめている。それがコミュニティカフェ「パンゲア」である。

カフェ継承という地殻変動

“収入のほとんどが単一の収入源からのもの”収入の形は違っても世の中の少なくないNPOが直面する組織運営の課題。自主財源の確立とミッションの実現、その両方をコミュニティカフェにより現実のものとしていく。NPOが“商売”を始める。その決断をした時からコミュニティカフェ「パンゲア」とNPO法人SEIN(サイン)の地殻変動は始まった。
大阪府堺市のまちの外れにある錆びた倉庫。そこに流れ着いた3人の若者が開いたカフェがパンゲア。カフェでありイベントスペース。多くの人々が集い、お客と時にはNPOやNGOについて語り合える場所。当時そこを訪れる客の1人であったのが、NPO法人SEINの代表理事湯川まゆみであった。
彼女の人柄を見た、当時の店長が湯川とSEINにパンゲアの引き継ぎを打診した。当時からいずれは商店街やカフェなどで若者を中心に多くの市民に対しさりげなく市民活動を浸透させるような仕掛けを描いていた湯川は、パンゲアをコミュニティカフェとして引き継いだ。

コミュニティカフェを動かすコミュニティ

先代パンゲアのコミュニティの一員であった湯川だが、引き継ぎを打診されたのは突然のことであり、組織内でも商売の経験がないことを理由に当初は反対が多数を占めていた。自主財源の必要性とコミュニティカフェの可能性を説き引き継ぎにこぎつけた。しかし、やはり経験のない商売。集まる期待とは裏腹に現実は何から手をつけるべきかも分からない。自分たちのやりたいことを打ち立てる必要性に気づいた頃、“ほっとけない”人々による支援の輪が誰の手からともなくデザインされ始めた。プロのデザイナーによる開店準備への協力。NPOが運営していると聞いて来てくれるお客。NPOだと知るとたくさんコーヒーを飲んでくれるようになった常連。コミュニティカフェを回し始めたのは関わる人々の持つコミュニティだった。
そんなパンゲアだが、NPOが運営していることを認知して来店するのは全体の1割程度、残り9割はカフェとしてパンゲアを利用している。

さりげなくそして距離感が大事

パンゲアの運営主体であるNPO法人SEINはNPOの支援をするNPOである。団体設立の経緯も自分たちが住み続ける堺にもっと若者を中心とした地域づくりを、そのためのNPOという制度や市民活動の普及、がSEIN設立時からのビジョンであった。一方で、堺には旧来の地縁組織は他地域に比べれば健在であり、堺の地域的特徴でもあった。NPOを支援する活動を通じて、多様な人々と出会う中で湯川の中である情景が浮かぶ。人々の生活のある場所、例えば商店街などのカフェと連携しNPO・NGOの広報をさりげなくできないだろうか?
客とは本来「まろうど」と呼び、招かれた人をさす言葉である。現代的な客と店員ではないそんな雰囲気。お互いの話を聞きあうような間柄。それが、パンゲアの目指す集う人との関係性。そして、パンゲアはあくまでもカフェ。テーブルの片隅にNPO・NGOに関するフォトブックがさりげなく置かれていたり、カフェの一画にはこだわりの品が空間の一部のように置かれていたりと、様々なきっかけを密かに忍びこましている。このスタンスはパンゲア継承以来一貫して変わらない。

カフェから見える地域のながめ

組織の安定的運営と、ミッションの実現。時としてこの2つの命題を二律背反的に突きつけられているNPOは多い。そこに商売を掛け合わせることで背反を解消し両方を追求できる。実はこのようなブレイクスルーはNPO業界ではまだまだ希有な事例である。
地域の人々がカフェを利用しそのカフェのことを気にかけるようになる。その中の一部がカフェを気にかけるように、地域や社会のことを気にかけるようになる。パンゲアもNPOから地域を、若者から子育て世代をというように気にかける範囲が広がったり、絞り込まれたりしている。
パンゲアという空間は“ほっとけない”増幅する仕掛けをデザインしているのかもしれない。この事実は自らの活動がいかに有用かという広報のみに執心するNPOにとっては非常に示唆的である。そしてそれを可能にしているのが多くの人々が集う場所でのさりげなさであったり、店と客のすこし変わった距離感だったりするのではないだろうか。気温が上った時に開け放たれる倉庫のシャッターからの海の眺めのような開放感がパンゲアの歩みとミッションに重なって見えるような気がした。

PROFILE

コミュニティカフェ パンゲア | http://www.pangea-sein.com/
2007年の春に1代目パンゲアからカフェを継承する。
アートスペースなども備え、ライブや表現活動など様々な活動を行うことができる空間。
運営主体は特定非営利活動法人SEIN。他にも堺市市民活動センターの委託事業なども担う。

WRITER PROFILE

久留宮 共樹
小学生の時に通っていた子育て支援団体「つくしクラブ」がNPO法人格を取得。
クラブに現在までかかわり続けそれをきっかけにNPOの経営に興味を持つ。大学院ではNPOの研究で修士論文を執筆。
世の中では公共分野の再編が盛り上がりを見せる中、もっぱらの関心はあくまでもNPOの組織論。
日本初の地域公共政策士という肩書を持ち、現在はその活用方法を模索中。

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